ユニバーサルデザインとバリアフリーデザイン【キーワード学習】

当ページのリンクには広告が含まれています。

 ユニバーサルデザインとバリアフリーデザインは、両方ともデザインのアクセシビリティを重視していますが、その目指すところとアプローチには違いがあります。
 ユニバーサルデザインは、全ての人が等しくアクセスできる製品や環境を目指しており、デザインの初期段階から全てのユーザーを考慮に入れます。
 バリアフリーデザインは、特定の障害を持つユーザーが物理的な環境を利用できるようにすることを目指しており、特定のアクセシビリティ問題を解決するための改造や調整に焦点を当てます。

目次

ユニバーサルデザイン(UD)

ユニバーサルデザインは「 Universal Design:UD 」の片仮表記です。

 UDでは想定される対象が「すべての人」となっている点が特徴です。これは、バリアフリーデザインの対象が「障害者」に限られている点と対比して考えられます。ユニバーサルデザインは、最初から全てのユーザーが利用できるようにデザインされた製品や環境を指します。
 その目的は、年齢や能力にかかわらず、誰もが同じ製品や環境を同じように利用できることです。この考え方では、特定のユーザーグループに適応するための後付けの改造ではなく、初めから全てのユーザーを考慮に入れることが強調されます。

ユニバーサルデザインでは「7つの原則」によって、その内容を定義しています。製品や公共施設だけでなくアプリのUIなどもデザイン対象として含まれます。

わかもの

すべての人って誰のこと?

おやじ

具体例を説明するぞ!

  • 年齢(幼児・子供・青年・大人・年配者・高齢者)
  • 性別(男性・女性・エックスジェンダー
  • 身体的特徴(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・知覚・四肢の機能)
  • 国籍(言語・習慣・宗教・出身・人種)etc…
UDの7つの原則
  • 公平性「誰でも公平に使用できること」
  • 柔軟性「個性に応じた利用方法が選択できること」
  • 単純性「使い方が単純明快であること」
  • 認知性「直感的にわかりやすい情報であること」
  • 安全性「操作ミスが直接的な危険に繋がらないこと」
  • 容易性「無理なく楽に操作できること」
  • 空間性「必要とする大きさとスペースとを確保すること」

関連する規格として「JIS Z8071:規格におけるアクセシビリティ配慮のための指針」があります。

バリアフリーデザイン(BD)

バリアフリーは「 Barrier Free:BD 」の片仮名表記です。

 健常者にとって障害となり得ないことでも、障害者に取っては障害(バリア)となり行動に制限を受けます。これを除去する思想や方針のことです。主に障害を持つ人々が物理的な環境を自由に利用できるようにするためのアプローチを指します。これには、車椅子の利用者が使える坂道やエレベーター、視覚障害者のための点字表示や音声案内などが含まれます。バリアフリーデザインは、特定のユーザーが利用できるようにすることを重視しています。

バリアフリー関連の法規制は「高齢者・障害者配慮設計指針」としてまとめられています。

また、ユニバーサルデザインはバリアフリーデザインの反省に立って考えられました。

関連規格として個別に「高齢者・障害者等配慮設計指針」があります。

一般的な設計手順
  1. 理解と調査
    プロジェクトの目的と目標を理解し、可能な限り多くのユーザーのニーズと要求を調査します。年齢、能力、文化的背景など、多様なユーザー特性を考慮に入れることが重要です。
  2. 設計の原則
    ユニバーサルデザインの7つの原則(公平な使用、柔軟な使用、シンプルで直感的な使用、知覚情報の利用可能性、誤りの許容、低い身体労力、サイズと空間の適応性と使用)を理解し、それらをガイドラインとして設計に取り入れます。
  3. プロトタイピングとユーザーテスト
    初期のデザイン概念をプロトタイプ化し、さまざまなユーザーグループでテストします。ユーザーテストは、デザインが多様なユーザーのニーズと要求を満たしているかを確認するために不可欠です。
  4. フィードバックの取得と反映
    ユーザーテストから得られたフィードバックを設計に反映します。ユーザーの体験を中心に設計を改善し、必要に応じてプロトタイプを再作成し、再度テストを行います。
  5. 実装と評価
    最終的なデザインを実装し、実際の使用状況を観察して評価します。新たな問題が見つかった場合は、再度設計プロセスにフィードバックを戻します。
  6. 継続的な改善
    ユニバーサルデザインは、一度で完了するものではなく、継続的な改善を必要とします。新たなユーザー要求や技術の進化に対応するために、設計は常に見直され、更新されるべきです。
  • 公共機関:
     公共交通機関にある高齢者向けや妊婦向けの座席。公共トイレの大人用と子供用の洗面台。公共トイレの水を流すセンサーは物理的な操作なしに動作するため、物理的な制約がある人々にとっても利用が容易。 公共の場所や交通手段(例えばバスや電車)には、車椅子を使用している人々が利用できるように、適切なサイズと空間の確保が必要です。車椅子用の傾斜路や自動ドア、視覚障害者を補助する点字表示や音声案内。階段や傾斜道に設置された手すりは、すべての人が安全に移動できるようにするための重要なデザイン要素です。これは、特にモビリティが制限された人々や高齢者にとって重要です。
  • エレベーターとエスカレーター
      エレベーターとエスカレーターは、階段の使用を必要とせず、ユーザーが建物内で容易に移動できるようにします。操作ボタンの大きさ十分に大きく隣接している要素から離れていることも特徴です。
  • 道路標識
     道路標識は、色、形状、記号を使って情報を伝えます。例えば、停止標識は赤い八角形で、一方向通行標識は矢印を用いています。これらは視覚的な記号として直ちに理解でき、認知の負担を軽減します。リスト
  • ドアノブ:
     ドアノブは電動的に回転させてあけるが、レバーを取り付けることでりい直観的に動作できる。たとば腕の力場弱かったり、握る力が弱かったり、手が濡れていたりといった多様性に対応できる。
  • 自動ドア
     自動ドアは、手がふさがっている、車椅子を使用している、子供を抱えている、重い荷物を運んでいるなど、さまざまな状況の人々にとって、ドアを開けるための労力を最小限に抑えます。
  • 自動停止機能付きの電子機器
     ストーブ、アイロン、ヘアドライヤーなどの一部の電子機器は、一定時間使用されないと自動的に電源が切れる機能を備えています。これにより、不注意からの火災リスクを軽減します。
  • 音声認識ソフトウェア
     マイクを利用した音声認識ソフトウェアは、ユーザーがデバイスを操作するための労力を最小限に抑えることができます。これは、視覚障害者やモビリティが制限されている人々にとって特に有用です。
  • その他:
    • 防火扉は、火災の際に火や煙の拡散を遅らせ、安全に脱出する時間を確保します。
    • 高さを調節可能な作業台は、背の高さや姿勢に制限のある人々に作業性を提供します

アフォーダンスとシグニファイアの違い

 アフォーダンスとシグニファイアの主な違いは、アフォーダンスがオブジェクトが可能にする行動を表すのに対し、シグニファイアがその行動をどのように行うべきかを示す指示を提供するという点です。アフォーダンスはオブジェクト自体から生じる可能性を表していますが、シグニファイアはその行動を誘導または指示するための追加の要素です
 効果的なデザインでは、アフォーダンスとシグニファイアは一緒に働き、ユーザーが製品やシステムを直感的に理解し、簡単に操作できるようにします。

  • アフォーダンス (Affordance)
     アフォーダンスは、デザイン心理学の概念で、あるオブジェクトが使用者に対して、どのような行動を提供するかを示すものです。この概念は、デザインの文脈で最も広く用いられており、ユーザーインターフェースや製品デザインにおいて、ユーザーが製品やシステムをどのように理解し、どのように使用するかを示します。
     例えば、ドアノブは「回す」ことをアフォーダンスとして提供する場合、その形状と配置により、人間が自然にドアノブを掴んで回す行動を引き出します。
  • シグニファイア (Signifier)
     シグニファイアは、ある行動がどのように行われるべきかを示す手がかりや指示を提供するものです。シグニファイアは、アフォーダンスが存在する場所を指し示したり、どのようにそれを利用すべきかを示したりします。
     例えば、「引く」または「押す」のようなテキストラベルや、矢印や色などの視覚的な指示は、ドアをどのように操作すべきかを示すシグニファイアです。

その他のデザイン手法

  • 人間中心設計「HUC:Human Centered Design」
     人間につかいやすいものを6つの原則を元に作っていく活動のこと。国際規格「ISO9241-210」でも内容が記載されている。調べていると2022年に「JIS Z 8520:インタラクションの原則」が改定されているので大穴で出題があるかもしれません。
  • 人間工学
     人間の能力や特性を理解し、それを製品や環境の設計に活かす学問です。人間工学は、人と機械の相互作用、人と環境の適合性、人の身体的および認知的負荷など、人間の健康・安全・効率性を追求するための設計原則や方法論を研究します。規格は「JIS Z8500シリーズ」できていされています。
  • インクルーシブデザイン
     前提として今までデザインプロセスに参加していない人がいるという立場で、ユーザーの代表を上流プロセスから巻き込みプロトタイプを繰り返す手法。UDがデザイナー主体の活動だとすればインクルーシブデザインはユーザー参加型と言えます。

ユニバーサルデザインUDまとめ【技術士二次試験】

令和2年に改正バリアフリー法が施行されています。機械部への影響は小さいですが、部門を跨いだ大きな変化としての出題もありえます。

日常扱っている製品の中で無意識に行っているユニバーサルデザインがないか、実業務を振り返って試験本番では具体例が記述できるよう準備しましょう。

関連キーワード

バリアフリー、心のバリアフリー、ユニバーサルデザイン、UD、ヒューマン・センタード・デザイン、人間中心設計、HCD、ISO9241-210、JIS Z 8530、UX、カラーユニバーサルデザイン、CUD、ピクトグラム、人間工学、メンタルモデル、アフォーダンス、シグニファイア、高齢者・障害者配慮設計指針、etc…

参考情報

参考資料は順不同で記載しています。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次