FMEAとFTAとは?【技術士二次試験】
技術士二次試験の機械部門で「FMEAとFTA」を含んだ問題は選択科目Ⅱ-1とⅡ-2に出題されます。この記事では「FMEAとFTA」の違いや周辺手法も含めて解説していきます。
大きな分類では「リスク評価手法や未然防止手法」のひとつです。
FMEA(故障モード影響解析)
FMEAは「 Failure Mode and Effect Analysis 」の略称で、故障モード影響解析と呼ばれています。
FMEAには「設計FMEA」と「工程FMEA」など複数の種類がありますが、ここでは「設計FMEA」についての述べていきます。
FMEAでは構成要素(製品・アセンブリ・部品)ごとに故障モードを想定し、その故障モードが与える影響について、優先順位をつけ対策を立てることで、製品の不具合を防止する未然防止手法である。古くは自動車や宇宙関連機器の分野で使用されていた。
致命度は「発生確率×影響度×検出度」で計算することで、定性的な評価を通して対策の優先順位をつけます。
一般的に「ボトムアップ手法」と言われていており、関連用語として「DRBFM」があります。また、FMEAの故障モード例は「IEC60812|JIS C5750-4-3」に記載されています。
FTA(故障の木解析)
FTAは「 Fault Tree Analysis 」の略称で、故障の木解析と呼ばれています。
FTAは発生した不具合や発生が許容できない不具合をトップ事象として、故障を発生させる可能性のある事象(要因)を下位に展開していくことで、トップ事象とその下位の部品やモジュールとの関係性を論理記号で表現します。不具合の発生確率を分析することで、不具合のメカニズムを明確にし、問題解決を図る手法です。個々の発生状況が得られなければ定性的な解析が難しい手法である。
一般的に「トップダウン手法」と言われており、関連用語として「ETA(事象の木解析)」があります。また、FTAは「IEC61025|JIS C5750-4-4」に記載されています。
DRBFM(変化点に着目したFMEA)
DRBFMは「 Design Review Based on Failure Mode 」の略称で、変化点に着目したFMEAです。
某自動車メーカーが開発したツールであり、現代の製品開発プロセスでは広く取り入れられている手法です。製品に変更を加えた際にその変化点から不具合が発生することを防ぐための手法です。
背景として、製品開発期間の短縮により効率的に不具合を防止する必要や、流用設計が多く過去の不具合事例が蓄積されており、それらを活用できる場合があるからです。
下記の本はDRBFMを考案された方が記された内容ですが、古いですが開発において大変重要な必読の書籍となっています。「良い設計、良いディスカッション、良い観察」
FMEAやFTAの長所と短所
FMEAとFTAの長所と短所を比較しながら紹介します。
FMEA=ボトムアップ手法、FTA=トップダウン手法、に大別できます。
長所=メリット(波及効果を含む)
- FMEAは不具合を未然に防止することができる。
- FMEAでは設計時の漏れを発見したり改善したりできる。
- FTAは発生した不具合の原因を視覚化し各専門家が効率的に分析できる。
- FTAでは下位に事象を展開することで具体的な対策に落とし込むことができる。
- DRBFMは流用設計の開発で必要工数を抑えることができる。
短所=デメリット(課題と問題を含む)
- FMEAは網羅的な活動であるため大きな工数が必要である。
- FMEAは故障モードの原因の抽出が人によりばらつきがある。
- FTAはトップ事象に設定していない想定外の不具合を対策できない。
- DRBFMは対象とする製品が不具合を含んでいないことが前提となる。
FMEAやFTAのまとめ【機械部門】
FMEAとFTAは相互補完的な関係になります。
どちらかだけを実施するのではなく、製品開発プロセスで両方を実施することで、製品の信頼性を高めることができます。
また、設計審査でこれらの資料を求められる場合も多いので合わせて実践しましょう。
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参考資料
参考資料は順不同で記載しています。
- TechNote|iPROS
FTA/FMEA再入門の基礎知識 - MONOist
メカ設計用語辞典FMEA - アイアール技術者教育研究所
そうだったんだ技術者用語 FTAとFMEAそしてDRBFM - 日経XTECH|有料会員向けの限定記事
FMEAやDRBFMの実施を必須にする秘訣
なぜ「DRBFM」を使うか分かりますか?
FTAを忘れて悩む慢性トラブル
いまさらFMEAが人気のワケ - JIS C 5750-4-3(2011)|IEC 60812(2006)相当
システム信頼性のための解析技法-故障モード・影響解析(FMEA)の手順 - JIS C 5750-4-4(2011)|IEC 61025(2006)相当
システム信頼性のための解析技法-故障の木解析(FTA)